0.柔道と潜在能力

 30数年前に柔道有段者の知人に、気とスポーツの共通性という観点から次の事を尋ねた。「今まで日本の柔道は非常に強かったのに、柔道王国という日本の時代はもう終わったのですか?」と。彼は、「外国人は食生活の違いによる体格の差や科学的トレーニングを早くから取り入れているので、日本も見習う必要があるでしょう」と答えられた。

 なるほどと納得しながらも、日本柔道の「柔よく剛を制す」という精神が失われようとしているのでは、という不安を強く感じた。自分より身体の大きい選手を投げ飛ばす時代は終わったのかもしれない。

 外国選手は、日本の強さの秘密が、強靭な精神力と極限までの練習の積み重ねであることを知り、今までの科学的トレーニングに一層の工夫と研究を費やしながら、さらに根性とか気合という精神面の強化、潜在能力の開発にまで力を入れ始めたのである。

 日本柔道が弱体化してきたのは、体内の未知なる力を引き出すことができなくなったことも要因の一つかもしれない。