0.気をリンゴに例えて

 リンゴを食用できるまでには、長い年月と労力と幸運が必要である。リンゴの種を植えただけでは実らない。土や肥料、水の必要な養分を十分吸収して、眠っていた生命力を呼び起こし、種に含まれる細胞を活性化させ、成長していく。

 リンゴの種の持つ気と相性の合う土や肥料、そして水がなければ発芽しにくい。土や肥料、水からも気を発している。肥料や水の量が多過ぎても育たない。適度な気の量が必要なのである。

 子育てにおいても我が子に幼少から必要以上に愛情という気を注ぎ過ぎると発達段階や人間形成に支障をきたしたりする。種の発芽においても適度な気を与える事が大切なのである。

 発芽し、若葉が出てくると、太陽エネルギーはリンゴの木の成長に必要な養分を与える。太陽も気なのである。地球上の全ての生物は、太陽の気の恩恵により、生命が維持される。

 リンゴの木がどの木も立派に成長するとは限らない。病気になり、枯れる木もあれば、強風で木が倒れたり、実が落ちたりするであろう。また、病気に打ち勝ち、強風に負けない木もある。そういう木は運も強く、たくましく育ち、立派なリンゴを実らせる。

 一本の木にリンゴがたくさん実っても全て同じ味とは限らない。太陽が十分にあたるリンゴとそうでないリンゴもあり、おいしさも違ってくる。全く同じおいしさにすることは不可能なのだ。中には未成熟のリンゴもあるし、鳥にかじられるリンゴもあろう。それもリンゴの運命なのである。

 食用として不十分なリンゴは、リンゴのおいしさを引き出す他の活用をすればよい。人間社会においても一人一人の個性や能力を発揮できる適切な場を与えれば、一層の活力が出てくるのと同じである。